「不要なものを消す」というのは写真レタッチを行う上で不可欠な技術である。デジタル一眼レフカメラの場合、レンズ交換時にボディ内部に入ったゴミがしばしば写り込む。スキャナは必ずと言っていいほど部屋のホコリを一緒にスキャンしてくれる。またそういった明らかな“ゴミ”でなくとも、撮影時には現実に存在していたが、絵柄的にはこれ無い方がいいよナ……、というモノもある。

 Photoshopには不要なものを消すツールとしてコピースタンプツール、パッチツール、修復ブラシツールなどが用意されている。

 こういうツールを駆使して、例えば女性の顔のシミ・シワを無くし10歳若返らせたりする訳だ。またワンちゃんのリードや青空に架かる電線なんかも、ついつい「消したい!」という欲求に駆られるものの代表である。

 そしてハゲ好きのみなさんであれば、

 消したくなりませんか。髪の毛。


STEP1: アタマの選択範囲を作る

 選択範囲を作る方法は色々ある。複雑な形の自然物ならなげなわツールで少しずつ輪郭をトレースしたり、あるいはアルファチャンネルに直接ブラシツールでお絵描きをしたりするのだが、アタマの場合はむしろ「円という幾何学の図形である」と捉えた方が良い。美しいカーブを描くにはフリーハンドよりもペジェ曲線を使うのがベターだ。

 ペンツールで大まかにアンカーポイントを置いていく。

 頭頂部は美しい曲線を描くためにあえてアンカーポイントを大胆に省略する。

 アンカーポイントの切り替えツールでアンカーポイントをドラッグし、アタマのラインに沿わせていく。

 サイドは髪を消した時にどのような輪郭が現れるかを想像してラインを引く。



STEP2: コピースタンプツールで髪を消す

 パスから選択範囲を作成する。

 エッジがあんまりハッキリしていると不自然なので、ぼかしを1ピクセル入れる。この値は写真の解像度や絵柄の被写界深度にも左右されるので、元写真の境界の様子をよく観察して設定する。

 コピースタンプツールで近隣の肌をサンプリングしながら髪を塗りつぶしていく。境目がなじむようにソフト円ブラシのようなボケ足の入ったブラシが良い。修復ブラシのように演算を加えるツールを使用すると、“もともとあった髪の毛のトーンを生かしながら肌色に塗る”というような結果になってしまうので、この場合は都合が悪い。

 内側を塗り終わったら選択範囲を反転させ、外側にはみ出た髪を背景をサンプリングしながら塗りつぶしていく。あらかじめ輪郭で選択範囲を作ってあるので、塗りがはみ出してしまうことが無い。

 全体のバランスを確認する。右側の凹みが少し不自然なので、アンカーポイントの位置を調整し、再度塗りつぶしの作業を行う。

 耳と側頭部の境目などはブラシサイズを小さくして丁寧に作業していく。ヒゲの生え際はコピースタンプツールの不透明度を下げ、重ね塗りをしながら徐々に薄くなっていくように仕上げる。



STEP3: ついでにマイクも消してみる

 マイクを消す場合は単純にコピースタンプツールを使うという訳にも行かない。“消す”という行為の実際は“消している”のではなく絵柄が似ているピクセルを他所から持ってきて“重ねている”のだから、この原理を手作業で行えばよい。

 マイクで隠れていない側の口をなげなわツールで適当に選択してコピー&ペーストし、水平方向に反転させる。不要な部分は後で削ればよいので、とりあえず大きめに選択しておく。

 レイヤーの不透明度を下げ、両方のレイヤーが透けて見える状態にし、角度や大きさを調整して合わせる。

 重ねた口のレイヤーにレイヤーマスクを追加。ボケ足の入ったブラシで不要な部分をマスクして見えないようにする。(※左の写真は作業工程を解りやすくするために便宜的にレイヤーの間に半透明の青を挟んでいる。)


 背景レイヤーを複製した上で、「口のレイヤー」と「背景レイヤーのコピー」を結合する。(結合しないと次でパッチツールを使えないため。)レイヤーの表示・非表示を繰り返し、合成によって生じた不自然な境目を見極める。

 不自然な部分をパッチツールを使ってなじませていく。

 スーツの部分は地の絵柄が単純なのでコピースタンプツールで消すことができるが、スーツの色が黒くて解りづらい。調整レイヤーでトーンカーブを追加、極端に明るくした状態で作業をするとやりやすい。調整レイヤーは作業終了後に非表示にしておく。(次の項でまた使う。)



STEP4: 澄んだ瞳にしてみる

 さて、このヒトの場合、眼がとても愛らしい(と思う)ので、せっかくだからもっと魅力的な瞳にレタッチしてみる。

 瞳の左上にキャッチライトが入っていることから、光源は左上にあることが解る。その反対側の虹彩部分を明るく補正するといわゆる“澄んだ瞳”になる。

 前項で追加した調整レイヤーのレイヤーマスクをクリックし、塗りつぶしツールで黒く塗りつぶしておく。

 描画色を白に変更し、ボケ足の入ったブラシで瞳の右下を三日月型にペイントする。このままでは明るすぎて不自然なので、トーンカーブを調整しなおす。


 できあがり。(マウスオーバーでビフォー/アフター)

「BERNANKE」 3178px × 2251px 2008/10/12
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Ben Shalom Bernanke